※参考文献
・『EncyclopediaEorzea』(以下EE1と略記)
・『EncyclopediaEorzea VolumeⅡ』(以下EE2と略記)
※ストーリーのネタバレありますので、ご注意ください。
◆はじめに
この世界は〝何か〟に囚われている。そう感じたことはないだろうか。
ある者は自由を叫ぶ。シド・ガーランドは「技術は自由のために」(EE1、195頁)と言い、レオファード・ミストは「自由と冒険を」(EE1、202頁)と言う。新生アラミゴのモットーは「自由か死か」(EE2、68頁)である。
一方で、決められた運命を享受する者もいる。モル族は「すべての部族内判断を「神」に問いかけ決定する」(EE1、92頁)。リジンのヒエンもまた「ヨツユが記憶を失いつつも生き延びたのが天命ならば、その命を天に問う」(EE2、59頁)と言った。
我々が渇望する「自由」もまた、与えられた「自由」なのではないか。この世界に生きていると、逃れられない運命めいた「何か」に縛られているかのような錯覚に陥る。
その一端として、この世界の「数字」について見ていきたい。そこには、明らかに「法則」めいた、偶然とは決して言えない、意図的な何かが潜んでいることに気が付くだろう。
◆神の痕跡―「12」「6」「3」という数字
『EE1』で、FF14世界の数字の神秘性に述べられた箇所を以下に引用しよう。
アルカナデッキには、「12」という数字(数秘学者が呼ぶ「神の痕跡」)に関連した数が端々に見え隠れする。メジャーアルカナは、「12の半分」である6枚であり、マイナーアルカナのスートも同じく6種類だ。6までの数札が6組あり、人物札は「12の4分の1」である3種類。そして、各スートは6属性を象徴し、属性は幻術と呪術に関連した2グループに分類できる(いわゆる「エーテル的三重性」)。また各属性には、2柱の十二神が当てはまる(いわゆる「天与の二重性」)のだ。(EE1、244頁)
「12」という数字が「神の痕跡」と呼ばれる要因は容易に理解できよう。そう、「エオルゼア十二神」である。一方で、「12」という数字が使用されるのは神に関するものだけでない。試みに『EE1』と『EE2』から「12」の数字が付されたものを抽出してみよう。
【12】
・「12の月と12の年」(EE1、17頁)
・1フルム=12イルム(EE1、20頁)
・「〔第五星歴〕最大で十二の都市国家が並立」(EE1、30頁)
・「〔第六霊災時の〕十二賢者」(EE1、35頁)
・「〔救世詩盟〕12人の「賢人」が集まり」(EE1、39頁)
・「善王モグル・モグⅩⅡ世」(EE1、41頁)
・「十二騎士」「十二名の騎士からなる「蒼天騎士団」」(EE1、47・150頁)
・「十二跡調査会」(EE1、53頁)
・神勇隊の師団(計12)(EE1、117頁)
・「教皇によって建てられた十二基の塔(ナインズウェアー)」(EE1、163頁)
・ヤ・ミトラ「12人の姉妹の七女として生まれる」(EE1、235頁)
・「十二杯のアシエン」(EE1、235頁)
・「妖異十二階位」(EE1、296頁)
・ゼノス「第ⅩⅡ軍団軍団長」(EE2、47頁)
・「第十二代目ハンゾウ」(EE2、123頁)
・ゾディアックブレイブ「12人の英雄」(EE2、302頁)
「十二賢者」や蒼天騎士団の「12」などは、何となく神秘的な数字を使用したのかなと納得もできようが、第五星暦にたまたま「12」の都市国家が並立したり、ミトラとシュトラの姉妹がたまたま「12」人姉妹であったり、影隠のハンゾウがたまたま「第十二代ハンゾウ」であることは偶然なのだろうか。
また、神の痕跡である「12」という数字でランクづけした「妖異十二階位」も不吉と言えば不吉であるし、「神」を否定するガレマール帝国の皇太子が「ガレマール帝国軍の中でも特別な存在である」(EE2、116頁)、「12」の数字を冠した「第ⅩⅡ軍団軍団長」であることも意味ありげではないか。
神の痕跡たる「12」の半分の「6」、さらに半分の「3」も重要な数字である。それを物語るように、これらの数字も以下のように多く使用されている。
【6】(12の半分)
・六大元素(EE1、9頁)
・星座「六天座」(EE1、19頁)
・「〔第五星歴1000年頃〕都市国家の数は全六都市まで減じていた」(EE1、30頁)
・「〔第六星歴〕エオルゼア六大都市」(EE1、37頁)
・レグラ・ヴァン・ヒュドルス「ガレマール帝国第Ⅵ軍団」(EE1、72・184頁)
・砂蠍衆(6人の頭目)(EE1、128頁)
・呪術士ギルド(6人兄弟)(EE1、140頁)
・六識鋼「会話可能な高い知性を有する生物」(EE1、288頁)
【3】(12の半分の半分)
・三大州
・「果てしなき三つの凱旋」(EE1、9頁)
・「終わりなき三つの敗北」(EE1、9頁)
・1ヤルム=3フルム(EE1、20頁)
・「三闘神」(EE1、26頁)
・「ベラフディア王ララフトⅢ世失踪」(EE1、48頁)
・「ササガンⅢ世、捕縛され王位を剥奪」(EE1、50頁)
・「不浄の三塔」(EE1、68頁)
・「三重の幻術皇(グリダニアの国是を占う3人の大神官)」(EE1、72頁)
・「リムサロミンサ三大海賊」(EE1、98頁)
・ドマ城「三の曲輪」(EE2、170頁)
・「ミツルギ家の三つ巴紋」(EE2、173頁)
・「三種の神器」(EE2、239頁)
◆さらに特別な数字「7」
以上の「12」「6」「3」以上に重要だと思われる数字が「7」である。『EE2』では、数字の「7」について以下のように紹介する。
七という数字にこだわったのは、古来より多くの神話にて象徴的に取り扱われ、東方においても縁起の良い数字と考えてられているからだ(EE2、100頁)
「7」という数字は、神話に象徴的に取り扱われているという。神の痕跡たる数字は「12」ではなかったかと疑問に思うが、「6」と「7」がともに神に関わる数字であることは、「六天座」と「七天(七獄)」の関係からうかがいしることができる。
エオルゼアの神話では「六属性を象徴する天界と地獄」に加え、「さらにこのほかに至高の天界である「星天」と、暗き底に沈んだ地獄の中の地獄である「霊獄」が存在している」という(EE1、19頁)。すなわち、「6+1=7」である。
厳密には、炎天・炎獄、水天・水獄、風天・風獄、氷天・氷獄、雷天・雷獄、土天・泥獄に加え、星天・霊獄であるから、「14」という数字がまず出てきて、「7」はその「14」の半分という考え方が妥当であろう。
「14」もまた重要な数字であることは言をまたない。本ゲームがFF「14」であることはメタ発言に過ぎるが、その他にも、「計十四世界」(原初世界+十三の鏡像世界)(EE1、14頁)、「第ⅩⅣ軍団長ガイウス」(EE1、38頁)、「陰陽十四のチャクラ」(EE1、221頁)などからも明らかである。
※ちなみに、『EE1』で紹介されるガレマール帝国軍は「Ⅵ」「Ⅶ」「ⅩⅣ」である。
その重要な「14」という数字の半分の「7」が、古来から多くの神話で象徴的に扱われてきたという。この数字も『EE1』『EE2』から抽出してみると以下の通りである。
【7】
・「繁栄の時代、第七星歴」(EE1、5頁)
・「十四の世界のうち、既に七つの世界が消滅している」(EE1、14頁)
・「七天と七獄」(EE1、19頁)
・「七大天竜」(EE1、269頁)
・「第Ⅶ軍団ネール・ヴァン・ダーナス」(EE1、40頁)
・「教皇トールダン7世」(EE1、71頁)
・「7年毎に開催されるレース「トライデント」」(EE1、94頁)
・「七天の中でも最上位とされる七番目の天界「星天」」
・ニーズヘッグとトールダン・十二騎士の戦い「七日七晩」(EE1、149頁)
・聖徒評議会「7名の高位聖職者からなるこの組織」(EE1、150頁)
・「七谺(クルザス)」(EE1、162頁)
・「七天樹」(EE1、164頁)
・マトーヤの趣味「日に7度のお茶」(EE1、170頁)
・「モンク僧の修行における究極的な目標は、最大にして最後の調整弁である「第七のチャクラ」を開放すること」(EE1、221頁)
・ヤ・ミトラ「12人の姉妹の七女として生まれる」(EE1、235頁)
・アマルジャ族「七酋長」(EE1、246頁)
・聖人選定会議「7年に一度」(EE2、26頁)
・「聖ガラドの7つの偉業」(EE2、27頁)
・ダルマスカ制圧「7万人にも及ぶ戦死者」(EE2、62頁)
・アームズ・オブ・ミード「この寺院で7年間の厳しい修行を行えば、いかなる罪も壊神により許されるという」(EE2、75頁)
・「七彩渓谷」(EE2、95頁)
・マウシ・ドタール「七剣」(EE2、110頁)
まずもって、「7」が『EE』から一番多く抽出できた数字であった。そして、現在の舞台が「第七星暦」で、「十四の世界のうち、既に七つの世界が消滅している」状況であることから、世界の根幹にかかわる数字であるとも考えられる。
そして、気味の悪いぐらい強調される「7」という数字。リムサロミンサの提督を決めるレース「トライデント」は「7」年ごとに開催され、ニーズヘッグとトールダン・十二騎士の戦いは「七日七晩」続き、帝国のダルマスカ制圧では「7」万人戦死者が出て、マトーヤは日に「7」度のお茶が趣味であるという。惑星ハイデリンの外からやってきたミドガルズオルムも「7」つの卵を携えていた。極めつけは、「聖ガフライドの7つの偉業」とナマズオ族の「大鯰大祭」であろう。
聖ガフライドの7つの偉業
戦場で傷ついた騎士ガフライドは、森の隠者に七日の間、世話になった。旅立ちの日、礼を申し出た彼を制し、隠者は告げた。礼は要らぬ。以後、七回だけ己が信じる正義のために行動せよ、と。〔中略〕彼は、己が信じる正義を七回貫いたことを伝えた後、こと切れたが、その顔には笑みすら浮かんでいた。(EE2、27頁)
大鯰大祭
七百七十とんで七年ごとに、一族生誕の地にて、七年続く祭りを催すべし。さもなくば、七年後に一族は滅亡するであろう(EE2、242頁)
これはもう、偶然と言えるレベルではない。「7」という数字も、何かを示す意図的な痕跡と考えられる。もっと穿った見方をすれば、「7」という数字になるように、そう仕組まれているのではないかと。世界、いや星の理がそう定まっていたとしたら…。
◆「2」=「双」
ともに重要な数字であった「14」と「12」。その差の「2」について、ここでは深く考えてみたい。
前述の「七天と七獄」の話に基づけば、その「2」とは「星天」と「霊獄」であった。つまり、「星」と「霊」である。星と霊は、すなわち「光」と「闇」、「陽」と「陰」である(Takagaki
Kaedeさんの「エオルゼア十二神の相関関係から見る光と闇」「光と闇、均衡の重要性―陰陽思想に着目して」参照)。陰陽が「14」という数字と密接な関係にあるのは、「チャクラには陰と陽と呼ばれる相反する性質があり、技を極めるためには、陰陽十四のチャクラをすべて開かなければならない」(EE1、221頁)という記述から明らかである。
つまり、「2」とは、陰陽の二対、光と闇の二対を象徴する数字なのではないか。厳密にいえば、「相対するものが二つそろっている」という意味の「双」という字がより適当であろう。この「双」という字(数字の「2」)に着目し、『EE』から抽出すると以下の通りになる。
【2】
・光と闇「揺るぎなき二つの支配」(EE1、9頁)
・「ナルとザルの二面の神」(EE1、17頁)
・「〔アルジクとニメーヤ〕ふたりの娘を儲けた」(EE1、18頁)
・「〔サリャクとアーゼマ〕ふたりの娘を儲けた」(同)
・「再び二柱の新たな神が渦より現れた〔ビエルゴ、ハルオーネ〕」
・「ベラフディアの双子の王子、ササウェフとササガン」(EE1、48頁)
・「ルヴェユール家に双子の兄妹が誕生。アルフィノとアリゼーと命名される」(EE1、52頁)
・「対リヴァイアサン双胴船」(EE1、61頁)
・ヒマー族「双子の民」(EE1、92頁)
・「双蛇党」(EE1、114頁)
・ティソーナ「二剣一対の呪剣」(EE1、131頁)
・マムージャ族「稀にふたつの頭部を持つ個体が生まれる。こうして生まれた子は「祝福の兄妹」と呼ばれ」(EE1、265頁)
・ナルザル「双子の神」(EE2、20頁)
・ライオンの瑞獣コマイヌ「双子」(EE2、121頁)
・ポポックリ・セセルッカ「双子」(EE2、127頁)
・英雄オルガナ「双子の妹がいた」(EE2、291頁)
・「双剣」(EE2、198頁)
注目すべきは、アルフィノとアリゼーのように、この世界にはやけに「双子」が多いことである。神話の方面を見ても、二柱の神が同時に生まれ(現れ)ることが多く、ナルザルにおいては「双子」の神である。
「双」を「二つで一組み」という意味に捉えるのであれば、光と闇はかつて一つであったという点にも繋がる(Takagaki kaedeさんの「かつて一つだったアーゼマとメネフィナ」)。
◆おわりに
以上、FF14世界の数字に着目して考察を加えた。浮かび上がってきたのは、特定の数字が意図的に使用されている点である。偶然の一致とは到底思えない。何者かが「痕跡」のように残している、とも考えられるし、特定の数字になるように、最初から仕組まれている、そうできている、と解釈できなくもない。
我々の歩む道が、歴史が、最初から決まっていたとしたら?「予言詩」なるものが、この世界に存在する怖さを、我々は後に知るのかもしれない。