コチニールカクター研究



1.はじめに

 コチニールカクターというモンスターをご存じだろうか。下記図①を参照頂きたい。

図①
図①

 中央ザラナーン・クラッチ狭間に生息するモンスターである。討伐手帳でこの魔物を倒した冒険者の方々も多くいらっしゃるだろう。
 経験値のためだけに討伐される。コチニールカクターという魔物の存在意義とはその程度のものなのかもしれない。そのため、彼らに注目し研究の対象となることはほとんどない。新生FF14で研究の対象となるのは、エンドコンテンツの攻略であったり、戦闘に関するプレイスキルや、ギャザラー・クラフターに関するお得情報ばかりであるのが現状である。こと魔物一匹に関心を向けられることは少ないといえよう。
 エオルゼアにおける新たな楽しみ方を模索する、発売から数カ月たった今、その模索も意義のある行為になるはずである。本記事において、コチニールカクターに対する熱い情熱を説くことで、このような楽しみ方もあるのだと知って貰えれば幸いである。昨今、CFやパーティに関して、人間関係やマナーの問題がしばしば指摘される。ギスギスオンラインと称されるように心に傷を負う人も少なくない。そんな時はふと、エオルゼアの大地に目を向けてはどうだろうか。エオルゼアは常に私達に寄り添い、私達を包んでくれている。そしてコチニールカクターもそんな私達を癒してくれるモンスターの一匹なのである。


2.コチニールカクターとの出会い
 研究と銘打ちつつ、コラムのような内容になるのは私の悪い癖である。ただ、エオルゼアにおける学者とは、研究を行い論文を書くといった類の活動ではなく、いわば脳筋的活動が多いことから、エオルゼアに生きる読者ならこのような学術的過程を経てない内容にも目をつむってくれると信じている。
 「はじめに」でコチニールカクターとの邂逅は、戦闘職の経験値目的(討伐手帳)によるところが多いと述べたが、私個人としては園芸師として出会った。コチニールカクターが存在する場所では、ブラックペッパーが取れる。調理で必要になる香辛料であり、その自炊のため私はよくここでプラックペッパーを刈っていたのである。
 ここでの「園芸あるある」になるが、採集の際にコチニールカクターが邪魔になるという点があげられる。数が異様に多いのである。刈ろうとして間違って攻撃してしまい、スプリントで逃げるというミスは一度やニ度ではない。私のコチニールカクターへの第一印象は最悪であり、最悪の出会いであった。だが、恋愛漫画よろしく、最悪の出会いというものは得てして好感情に転じやすい。私もそうであった。まさに、〝フラグ〟といってもいいかもしれないが、私とコチニールカクターとのフラグとはその愛くるしい「走り方」であった。

3.コチニールカクターの魅力①~ドコドコドコ~
 まさに一目ぼれであった。最初はブラックペッパーを刈ってる時に近づいてくるコチニールカクターに若干の違和感を覚えたにすぎなかった。それもそのはず、私は基本FF14をプレイするときは、限界まで視点を引いてプレイしているので、コチニールカクターをまじまじと近くで見た事すらなかったのである。
 その違和感に誘われるまま、カメラの視点を近づけると、異様なポーズで「ドコドコドコ」と走ってくるコチニールカクターが目に飛び込んできたのである(前掲上記図①参照)。

 その瞬間が深夜だったせいか、異常なまでに面白く、また異様なまでに愛くるしかった。正直、園芸をやっている時は暇である。単純作業の繰り返しで眠くなってしまうというのは世のギャザラーの悩みの種だろう。ただ、この場所でコチニールに出会ってから私の世界は一変した。こいつが「ドコドコドコ」と近寄ってくる度に「ふふっ」と笑ってしまうのである。
 この走り方について、文章で伝えるには私の語彙力では限界がある。是非一度、中央ザナラーンまで足を運び彼の走り方を見て頂きたい。また、参考までにFCLalaland(今は解散しております)のマスターが描いたコチニールカクターの走り方の絵がある(下記図②)。わざわざ見に行くのも面倒だという人はこの絵で脳内補完して頂きたい。個人的には見事に特徴を捉えている絵だと感動しました。

図②
図②


4.コチニールカクターの魅力②~雨の日のコチニール~
 彼の走り方を見てから、私はコチニールカクターの虜になった。FF14を全く知らない友人に「コチニールカクターの走り方」の物真似をして、異常なまでにスベリ倒しても私の愛は変わる事はなかった。むしろ、忘年会での一発芸が決まり未来も明るいのである。
 そんな折、フレさんにコチニールカクターの素晴らしさを伝えようと、一緒にコチニールカクター見学にいった際、新たな発見があった。そう、それは天候が雨の時にしか起きない奇跡とも言うべき映像であった(下記図③)。

図③
図③

 走り方は同じでも、雨の日は水しぶきをあげながら、まるでスキーを滑るかの如くなめらかな動きになる(そう見えるだけだが)。静止画だと全くわからないので、これは是非己の目で確認して頂く他ない。天候が雨になるのを待たなければならず、さながら雨上がりの虹のように奇跡的な場面であるため、忍耐力が必要になるが、コチニールファンとしては労を厭わないレベルの面白さ、いや可愛らしさである。

5.コチニールカクターの魅力③~名前と顔~
 まず、コチニールの走り方に私のハートは盗まれたわけだが、よくよく付き合いが深くなってくると、その存在全てが愛おしくなるのは、恋人もコチニールも変わらない。
 まず、名前である。コチニールって響き自体がもう面白いし、愛おしい。これに理屈はない。何となくそう思うとしか言いようがない。「何となく」という単語を研究者が使うのは最早学術的思考を放棄したとしか思われないだろうが、コチニールに関しては研究者としての常識を一度脱ぎ捨てる必要があるだろう。彼の存在が最早非実在生物なのだから。
 ザナラーンには、「カクター(西ザナラーン)」や「サボテンダー(南ザナラーン)」など、類似モンスターが点在する。歩き方も同じである。しかし、私はコチニールカクターほどには愛着を覚えないのである。彼が私の初体験だったということも拭いきれない事実ではあるが、それ以上にコチニールを冠した名前に「ふふっ」となるのである。
 コチニールとは「カルミンともいう赤色の色素。サボテンにつくコチニール(日本ではエンジムシ)という昆虫[Dactylopius coccus]の雌の体を乾燥したものから抽出して調製する。食品の着色に用いる。(『栄養・生化学辞典』参照)」という意味らしい。サボテンにつくコチニールという昆虫の名前を、そのサボテンが冠してるという意味不明な面白さもここから読み取れるだろう。有体に言えばよくわからんのである。
 そして、顔である。愛嬌のある顔に見えないだろうか(顔の印象と云うのは、人それぞれであり、ここは評価がわかれる所であるが)。FFシリーズでお馴染のサボテンダーともまた趣の異なる表情である(サボテンダーとの比較は下記図④)。表情については、後で別の側面から詳述したい。

図④
図④

 

6.コチニールカクターの魅力④~ドコドコドコからの春日~
 コチニールカクターの「ドコドコ走り」に魅力の大半があることは疑いようのない事実であるが、その「ドコドコ走り」後の「制止の状態」も注目に値する。すなわち、〝動〟と〝静〟である。緊張と緩和ともいうべき芸術性がコチニールカクターの一連の挙動に表れているのである。下記図を参照して頂こう。

図⑤ ドコドコドコからの・・・
図⑤ ドコドコドコからの・・・

図⑥ ドヤァ!! ( ・´ー・`)
図⑥ ドヤァ!! ( ・´ー・`)

 この「ドヤァ!!」の時の胸の張り具合から、私は個人的に「春日〔ヨミ:カスガ〕(漫才師オードリーの春日氏の挙動から引用)」と呼んでいる。少しでもエオルゼアの日の光を浴びようと、精一杯胸を張るその姿に全エオルゼア民が泣くのもそう遠くはないだろう。彼は今を生きている。「生きねば!」・・彼の後姿はそう語っているように見えた。

7.【補論】フレさんの慧眼 
 エオルゼアを救った英雄でもある某フレさん(ジョブ:学者)と、コチニールカクター見学に行った際、貴重なご意見を披露なされていたのでここに紹介したい。先程紹介した「ドコドコ走りからの春日」を見てふと仮説が思い立ったのだという。
 簡単にまとめると、「彼等は生き抜くためにサボテンになりきっている」ということである。具体的には、先程の春日ポーズの時(制止の時)というのは、外敵から身を守るためにサボテンになりきっているのだという。確かに、制止の時の彼の表情を見てみると目をつむっている(前掲図⑥参照)。そのため、表情がなくなり遠目からはサボテンにしか見えない。そして、ドコドコドコと動いている時は、外敵から隙を見て逃げているのだという。彼女曰く、擬音的には「ドコドコ」ではなく「トコトコ」なのだと。確かに改めて見ると、コソ泥のような動きにも見える(前掲図参照)。この説は史料的裏付けのない推論でしかないが、面白い論考であることに疑いはない。史料に縛られ、自由な発想を忌避する学者に対するアンチテーゼすらこもったこの推論を誰が論破できようか。エオルゼアの学者ここにあり、である。

8.おわりに
 エオルゼアに生きるのは我々だけではない。モンスターだって一緒である。必死に今を生きている。あずかり知らぬ所で討伐手帳とやらに登録され、我々冒険者に日々討伐される毎日。そんな日々を彼等はどう思いどう生きているのか。手を出されるまでは、決して自ら手を出すことのないコチニールカクター。倒されることをわかっていても「ドコドコドコ」と近づいてくるコチニールカクター。フレ説によると、外敵から身を守っているのに、何故その敵たる我々に近づいてくるのか、一見矛盾しているようにも思える。しかし、視点を変えれば、コチニールカクターは我々を敵だと認識してないのではないか。我々との友好の証として、あのようなユニークな動作で彼等は近づいてきてくれているのではないか。そんな彼等を我々は微量な経験値のために討伐する。倒されても倒されても、彼等は絶対にアクティブエネミーになることはない。そんな彼らを我々は今日もまた討伐しにいくのである。

 

【完】

 

 

 

 

 

「コチニールカクターの走り方エモ」と「コチニールカクター装備」が実装されることを願って。